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2008年11月17日月曜日

悩ましい iPhone App の価格決め…どう値段をつける?

Twitter をつらつらと眺めていた所、面白い記事を発見しました。Tim O'Reilly (おそらくオライリーメディアの CEO である Tim O'Reilly ご本人)の tweet からの引用です。

Sensible iphone app pricing & what's wrong w 99 cents: http://tinyurl.com/5mb4cl Must read for devs (via @danb21)


How to Price Your iPhone App out of Existence | SAFE FROM THE LOSING FIGHT
http://www.losingfight.com/blog/2008/11/15/how-to-price-your-iphone-app-out-of-existence/

このブログの主である Andy Finnell がこの記事で主張していることはつまり、

現在の iPhone app の値段は安すぎるため、市場的に「持続可能 (sastainable) 」ではない

ということでしょう。無料のアプリケーションや、有料であっても安いアプリケーションばかりが上位 100 位までを占めてしまうため、職業としてプログラマをやっている人は iPhone App Store を市場としての魅力があるとは思えなくなってくるだろうというのです。

なぜ App Store のアプリケーションが安いのか、その理由について Andy は次のように述べています。簡単にまとめておくと…

Reason #1: Initial store prices … Sega などの大企業と価格競争するのは得策ではないと考える人が多いから

Reason #2: Customer expectations … TWAUの調べによれば、購入する人は $5 以上は支払おうとしないから

Reason #3: Gaming the system … App Store のランキングは「ボリューム=どれだけダウンロードされたか」で決まる。つまり、安いアプリの方が当然ダウンロード数は多い。100位以下のランキングのアプリは見つける事さえ難しい。

Reason #4: Short term vision … デベロッパー達は「今」儲けようとして、将来ロイヤルティの高い顧客を囲うことを見据えた商品戦略をたてていないから


これに対する解決策も提案されています。それは、開発者自らが価格を変更すること、つまり

The Solution: $9.99 is the new $0.99 $9.99 を新しい基準価格にすること

です。($9.99 は Sega が WWDC で広報した自社のアプリにつけた価格)

長期的に見れば、Apple でさえ、低価格のアプリは歓迎しないだろうと私も思います。記事にあるように、99 セントというような価格の安いアプリで3割のテラ銭を取った所で、App Store のために Apple が支払っているコストにはほど遠いだろう、というのがその根拠です。より質のよい高いアプリケーションが上位に来てもおかしくないようなシステムの変更があるのではないか、と、この記事の著者も考えているようです。

It is likely that Apple will fix this hole. They want to make money too. For a $0.99 app, Apple is only making $0.30 per copy, which has to cover bandwidth, transaction fees, and advertising. I’m not suggesting Apple isn’t making money off $0.99 apps, but I am saying they’d probably prefer to be selling $9.99 apps.


なにより、プロの開発者が「魅力的」とは思えない市場で商品を展開できるはずもありません。もしこのままのシステムで運用するのであれば、食うに困らないから安い値段をつけられる開発者の製品が上位にくるばかりです。零細企業や適正な価格で提供しなければ生活できないプログラマは、App Store 以外の市場を探す必要がでてきます。そして現時点では iPhone アプリは App Store 以外で流通されることは Apple によって許されていないのです。

長く製品を育てて行こうとすれば、それなりにコストはかかります。ただ作りっぱなしのバージョン 1.0 のソフトが増えるばかりで、成熟したソフトが出てこないのではないか、というシナリオも Andy は考えているようです。ゆえにこうしたモデルは「持続可能ではない」だろうというわけです。

言うまでもなく、安いソフトや無料でも素晴らしいソフトはたくさんあります。それを否定するのは私の本意ではありませんし、そんなアプリがなくなればよいと言っているのでもありません。このブログの記事を書いた Andy Finnell もそう考えているでしょう。

ただ App Store を一つのビジネス、製品を売り買いする「市場」として見た場合、今の仕組みで果たしてそれが「持続可能」なビジネスを生み出していけるのか?という点について、この記事は重要な問題提起をしたということは言えると思います。iPhone の開発者はぜひとも読んでいただきたい記事です。(もちろん、App Store の責任者の方も!)

どの程度の価格なら市場に受け入れられて、どの程度のもうけなら食べていけるのか、という問いはどの世界でも根源的な問題ではあります。しかし、私だったら、できることなら技術を安売りするのではなく、きちんとした製品を適切な価格を設定して、私が食べるに困らず、購入したお客さんも満足してもらえるような価格、ビジネスが持続可能な価格で売りたいなと考えています。もちろん、無料で、あるいは安い価格で良いソフトを提供したい、という志のある人は、どんどん作って発表していったら良いと思います。有料無料を問わず、Win-Win な解決のためには、やはり適正な価格設定と公平なシステムは必須でしょう。

App Store もまだスタートしたばかりでいろいろと問題はあるようですが、システム上の問題やビジネスの仕組みの問題は Apple 頼みにならざるをえません。こうしたことも徐々に解決されるといいなと思います。


 iTunes Store(Japan)

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