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2008年4月8日火曜日

[本] 健康に生きるためのエビデンス-「100歳まで元気に生きる!」by ジョン・ロビンス

勝間和代さんの別のブログにもAudiobook 版の紹介がありましたが、その原書「Healthy at 100: The Scientifically Proven Secrets of the World's Healthiest and Longest-Lived Peoples」を読みました。(邦訳はこちら:「100歳まで元気に生きる!」)
地球上で「長寿 Longevity」の人が多い地域に関する調査を引用しつつ、どういう要素が人を長生きさせるのか?ということを考察した一冊です。



日本人には聞き慣れない地名がたくさんでてきますが、日本の沖縄のおじいやおばあの話もでてきます。ただし本書の内容ではないですが、昨今の沖縄はご存知の通り男性の平均寿命が短くなりつつあるという報告もあります。そういう意味でも、近代化やグローバリゼーションといった問題と寿命の関係を考えさせられる一冊であると思います。

この本で「そうだったのか!」と思う箇所は多々あるのですが、たとえば、CMで事実とは違うイメージを持つ例を上げてみます。コーカサス地方のアブハジア(現在はグルジアの自治共和国)ですが、コーカサス地方といえば皆さん何を思い出しますか?冠雪した高い山々の前に放牧された牛、民族衣装を着たおばあさんと子供とヨーグルト…そんな光景を思い出すのではないでしょうか。

でもそれはどうやら、昔食品会社のダノンが広告の為に作り出したイメージがもとになっているようです。実際には「ヨーグルト」と呼ばれる食物はコーカサスにはありません。ヨーグルトというのはそもそもトルコ語のヨウルトが語源で、トルコ周辺で食べられていた発酵乳から派生した食べ物のようです。アブハジアの人たちが食べている発酵乳は牛やヤギや羊の乳から作ったマツオーニ matzoni というものだそうです。

ダノンは110歳のおばあさんが89歳の息子にヨーグルトを食べる事を勧める広告でヨーグルトを相当売り上げたらしいのです。しかし、実際の長寿の方達は違うものを食べていたとしたら…なんだかなあ…ですね。(別件ですが、ダノンは誇大広告で訴訟も抱えているようです)でも、ヨーグルトそれ自体が悪いと言っているわけでは決してありませんので、誤解なきよう。

同じように、コーカサス地方の発酵食品といえば最近流行りまくったケフィアですが、これはどうなんでしょう。この例だけではなく、長寿をイメージして食べているものは、現代の食品流通や販売戦略の中で、その地方本来の食べ物とは違ってしまったものもあるかもしれません。

この本に引用されている長寿地域の例は1970年から1980年代とちょっと古い感じがします。先のアブハジアでは今はどうかと(チェルノブイリやアブハジア紛争の影響とか)考えるだに不安になりますし、南米やパキスタン、沖縄の話にしてもそうです。しかし(160歳という人がいたとかいう話はまあ真実ではないにしろ)かつては長寿の人が多い平和で精神的に豊かな地域があったという事は、現代の生活を省みるのに十分説得力があると思います。(今そういう地域が少なくなってきているからこそ、昔の有力なエビデンスに頼らざるを得なかったのかもしれません。ちょっとうがった見方ですが…)

この本での作者の視点は、食べ物や運動もそうですが、精神的な事もまた重んじているように思います。それゆえ、少々のうさんくささも感じますが、長寿のためには心の平安も大事だということは多くの人が同意できることでしょう。

現在、日本は平均寿命が男女とも一位という長寿の国になりましたが、その生活の質、我々をとりまく環境はどうでしょう。「後期高齢者医療制度」とか、その言換え案として出てきた「長寿医療制度」という言葉には、果たして実質を伴った、人生の先輩たちを名実ともに大事にする「畏敬の気持ち」は含まれているのでしょうか。

政治の問題はともかくとしても、現代社会に生きる限り、お金は非常に大事です。しかし、そもそも、どうして健康保険が機能しなくなってきているのか、なぜ病気の人がこんなに多いのかを考える鍵の一つが、この本にはあると思います。そして、考えて状況を良くするための行動しなくてはいけないですね。本当はその行動を政治にしてもらいたいものですが、たとえば、科学的根拠の曖昧なまま、「メタボ*1退治」のために大金を拠出して大丈夫なんだろうか、個人のためのことなのに罰則規定ありの制度ってどうなんだろう?とか、いろいろと疑問に思うし、考えてしまいます。

個人的な話でいえば、今までの私の生活には、この本にあるような長寿になる要素はほとんどないです。この本の話は、私には基本的に耳の痛い話ばかりでした(苦笑)

白米大好きで食パンはバター塗って食べてるし、ジャンクフードは食べるし、肉食だし…せめてこの本の教えを守ってカロリー制限しないとこの先、さらに深刻な事態になりそうな予感。(っていうか、周りのひとには前から言われてました。私が聞く耳を持ってなかっただけですね。はい。ごめんなさい <(__)> )

人間が平和に長生きするためには、何が必要で何が必要でないかを見直すには、この本は良いきっかけになるのではないでしょうか。お腹の周りが気になる人は、是非読んでみてください。

*1 (メタボについて)この言葉、用語が間違っているので使いたくないのですが、あえて使ってます。本来「メタボリック」とは metabolic 物質交代の、新陳代謝の、という意味の形容詞で、脂肪や肥満を指す言葉ではありません。脂肪は fat で、肥満症は obesity です。ちなみに、胴囲だけでは代謝不全症候群かどうかは診断できません。きちんとした検査を受ける必要があります。また代謝不全症候群の目安となる胴囲の基準は、日本とWHOの基準では違います。ググるといろいろ出てくるので調べてみてはいかがでしょうか。



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