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2008年3月12日水曜日

[本] 「科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる」戸田山和久

科学哲学というと「科学?哲学?」という人が大半だと思いますが、科学を哲学するとはどういうことかを、センセイが学生に解説する形で明らかにしていこうというのが「科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)」です。



科学史と科学哲学は大学院では同じ分野というかグループに分類されることが多いので、近い学問なのかと思っていたのですが、そんな事はないらしいということがよくわかりました。ただ、あながち間違いではなくて、科学史によって明らかになったことを科学哲学が利用する事はあるようだという事(p.169に言及のあるラウダンの悲観的帰納法とか)もあるらしいということなので、少しは私の直感もあたっていたというか。

科学哲学は難しい。何が難しいのか。演繹とか帰納っていうのは論理学、数学というようなところで顔をだす言葉だけど、この辺が何を意味するのかをわかっていないと、後の議論に着いて行けない。数学や論理学のような難しさがあると思います。

たとえば、アラン・ソーカル事件(p.135 にある「ソーカルのでっちあげ」)は有名だけど、実際何があったのかを理解するには、その背景となったポストモダンってなんだとか、何が論争の種になっているんだとか、そういう事をわかっていないと、何が起こっているかさえよくわからない。日本でもポストモダンは流行したし(いやー、当時かぶれた人はたくさんいたと思う)、ポストモダンっぽい学者は大勢いたけど、結局何を言いたいのかよくわからなかった。私自身は「脱構築ってなに?」くらいの意識だったし… だから、そういう事件があったということだけでも、なにやら一種の爽快感を感じたのですが、じゃあ何が問題だったのか、ということになると、この本のように、最初から説明してくれないとなかなかわからない訳です。

このブログを始めた頃のエントリで、「司法関係者だから、だまされないとか、うそをつかないとか、まちがわないとか、そういう事ってあるんだろうか?」と書いた事があったけど、科学に対してこういう疑問を呈するのが科学哲学と言えるかもしれません。私は「メールに書いてある事が本当かどうか確認した方がいいですよ、私は嘘の情報だと思いますけどね」とメールしたら怒ってしまった人がいたんだけど、そいうことをもっとあからさまにやったのが「ソーカル事件」なのかなと思ったけど、この本の解説によれば、もっと複雑な問題があるらしい、ということがよくわかります。

いきなり図書館で借りてきた「「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用」を読んでもよくわからないので、もうちょっと最初にもどらないとなーと思って買ってきた「科学哲学の冒険」でしたが、今のところ、入門書としては先日の「哲学思考トレーニング (ちくま新書 (545))」とこの「科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)」を読んで正解でした。

じゃあ、私はどこを目指して読んでいるかというと…とりあえず、「疑似科学」の線引き問題が理解できるようになりたいなと思っています。良い本があったら是非ご紹介ください!

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